卒後研修会セミナー

第10回

日時:平成12年2月19日(土)午後7時より
場所:宮城県歯科医師会館
講師:東北大学歯学部口腔外科学第二講座  千葉 雅俊 先生(15回生)
演題名:「顎関節症を考える」 ー疼痛や開口障害に対するstrategyー

<抄録>
 顎関節症ほど臨床医のbiasが強い疾患は少ないように思います。そのため専門医の間でも顎関節症に対する考え方や治療について相当の違いがあるのではないでしょうか。こうした状況下で1996年にNIHのTechnology Assessment Conferenceが発表した顎関節症に関する見解は、多くの臨床医にimpactを与えました。その内容を要約すると、1.初期治療としてbestと言えるものはなかった、2.非可逆的治療は極少数の患者に適用される、3.顎関節症はself-limitedな疾患で保存治療を段階的に行うべきである、4.それでも症状や徴候が改善しない場合に有効性が証明された治療法を患者主体に行うべきである、というものでした。
 第二口腔外科・顎関節外来で行っている顎関節症の治療は、1〜4の見解にほぼ沿うものと考えます。そこで顎関節症の疼痛や開口障害が生じる機序をどの様に捉え、いかに治療したら良いのかについて臨床に則した形で話したいと思います。

<概要>
 最近、よく話題になる顎関節症(TMD)は、これまで歯科領域の各分野の先生がいろいろなアプローチを行ってきました。そのような中、1996年にNIHのTechnology Assessment Conference が発表した顎関節症に対する見解、@初期治療としてbestと言えるものはなかった。A非可逆的治療は極少数の患者に適応される。B顎関節症はself-limited な疾患で、保存治療を段階的に行うべきである。Cそれでも症状や徴候が改善しない場合に、有効性が証明された治療法を患者主体に行うべきである。…は、治療のガイドラインとなるものです。
 今回、千葉先生のお話はTMDの基礎(概念、定義、原因など)から始まり、これまでの研究結果から導入していただきました。疼痛の主体が筋肉あるいは関節のどちらにあるのかという点では、まず筋肉を診察するのがポイントであるとお話がありました。筋肉の異常緊張と循環障害が悪循環を引き起こし、防御的筋固縮が起こります。いわゆる肩凝りに似た症状が発現し、顎関節症となるのです。治療は、理学、薬物、咬合療法の順で行われ、どの場合でもインフォームドコンセントが重要です。患者へ正しい知識を供給し、不安を軽減させ、治療への意欲・現実的期待感を持たせることで長期管理が可能となります。これで、筋肉と循環障害の悪循環を断つ基本ができるのです。理学療法では、超音波による深達温熱が効果的で、暖めた後、下顎の下方牽引ストレッチを行います。薬物療法では、鎮痛剤を主として使います。潰瘍形成の副作用に気をつけて、投与期間・量、薬剤種による効果の有無確認、併用をしないなど注意して使います。場合によっては、マイナートランキライザーを使います。外科手術もおこないますが、以前行われた顎関節頭切除などの不可逆的な手術は行われないようです。外科的手術の症例では、関節腔洗浄療法について、説明がありました。