「国民の負託に応えられる総合診療歯科医師を目指して -補綴力を高める-」

「国民の負託に応えられる総合診療歯科医師を目指してー補綴力を高めるー」をメインテーマに、東北大学歯学部同窓会第34回卒後研修会を令和元年10月20日(日)、宮城県歯科医師会館・5階講堂にて開催いたしました。

10月20日(日)研修会当日は,来賓、講師、座長、卒後研修員、同窓会、同窓外歯科医師、大学院生、研修医、コデンタルスタッフを合わせて138名の参加者となり、大変盛会となりました。

最初の講師の久保圭先生は、一歯単位に対する補綴治療の守るべき基本原則について講演されました。補綴前処置として、隔壁の重要性、ニッケルチタンファイルの使用、水平的・垂直的矯正治療、メタルコアからファイバーコアへ、ZOOの使用、自家歯牙移植、インプラント治療など、多くの症例についてお話しされました。

依田信裕先生は、歯列単位における補綴治療について主に欠損歯列に対する補綴学的な留意点について、すれ違い咬合とIARPDの症例を提示し、講演されました。プロトコールを用いた検査・診断を基に、問題点を抽出し、適切な治療方針の立案することが重要である。特にパーシャルデンチャーの力への対応を考慮する上では咬合検査が重要である。支持様式を考慮する際には支台歯と粘膜の支持能力を評価した上で、咬合力の適正配分を行う。IARPDは低侵襲のインプラント治療として有用である。IARPDはインプラント治療のリカバリーとしても使用可能である。メンテナンスが難しく、適切なブラシッシング指導が重要である。義歯の内面は、ヒーリングキャップの時はレジンタッチの場合もあるが、ロケーターアバットメントの使用も増加している等、具体的な臨床例を示しながら様々な切り口による御解説を頂きました。

川上清志先生は、咀嚼機能の回復と維持、そして補綴治療を行う上での咬合の捉え方について講演されました。歯根膜の存在と働きが重要であり、できる限り歯を残す。必要最小限の治療介入を治療指針としている。咬合再構成時に咬頭嵌合位の捉え方を考慮すべき症例呈示。咀嚼筋のリラクゼーションを図った上で得られる下顎安定位を決める。エングラムの除去が重要である。下顎誘導法のチンポイント変法を用いる。オクルーザルスプリントの使用。炎症と力のコントロール。MTM装置の使用。テンポラリーで外傷性咬合のチェック。咀嚼の視点から主機能部位が大事である等、患者の全体像を見据えた一口腔単位の治療の重要性についても言及されました。

山影俊一先生は、まず前半、術後10年〜30年の中長期の経過観察10症例において「何が起こったか?」、そしてそれにどう対処したかについてインターディシプリナリーアプローチの重要性とともにエビデンスも交え解説されました。エンド、ペリオ、補綴、矯正等それぞれの基本的な治療手技を確実に行う事が、“より良き術後経過に繋がる”というコメントは特に心に響くものでした。後半では、メインテナンスによりカリエスやペリオがコントロールされるなかで欠損の原因として増えてくる「垂直性歯根破折」について触れ、この早期発見・対応が歯槽骨の量を維持し、口腔機能の継続に大きく寄与することを強調されました。また、ご講演の途中では咬頭嵌合位で印象採得と咬合採得を同時に行う咬合印象法のデモも実施し、さらに患者の主訴や希望を叶えるためにはインプラントやGBRも臨床のオプションとして不可欠な時代になっている事を多くのケースで示され、上級者向けのアドバンスな内容も含んだ大変興味深い講演でした。

総括ディスカッションでは、自然挺出へのアドバイス。下顎7番の生活歯でクラックが見られる場合の対処法。テクニシャンとの付き合いかた。研修医へのアドバイスなど活発な討論が行われました。

前日の10月19日(土)には15時より、宮城県歯科医師会館視聴覚室において卒後研修会プレイベントとして、同窓会員によるケースプレゼンテーションを開催致しました。37名が参加され、下記の5名の先生に各演題名にて口演をいただきました。
会場からは鋭い質問が多数上がり、時間切れの為に質問のセーブもありました。

  • 百々 明先生(42回生)「深在性う蝕に対する当院での取り組み -歯髄温存を図った症例を交えて-」
  • 矢島健大先生(41回生)「感染根管治療と補綴治療が必要となった歯に対して、文献考察を基に治療方針を決定した一症例」
  • 永田智大先生(45回生)「エビデンスに基づいた重度歯周病患者の補綴の選択 マイクロスコープを使用した歯周治療で歯を保存した一症例」
  • 原田章生先生(40回生)「酸蝕症によるTooth wearに対し全顎的に補綴処置を行った症例」
  • 佐野瑞樹先生(40回生)「重度歯周病患者に対し欠損改変を行った症例」

卒後研修会懇親会は、10月19日(土)19時より、ミア・アンジェラ一番町店において、来賓、講師、座長、卒後研修委員、同窓生の先生方を加えた45名が参加して行われました。イタリアン料理を楽しみながら親睦を深めました。

卒後研修運営副委員長 石川禎一(21回生)記

[プログラム]

(1) 開会挨拶  卒後研修運営委員 佐々木 俊(43回生)
(2) 同窓会会長挨拶  東北大学歯学部同窓会会長 大内光太郎
(3) ご来賓ご挨拶
     宮城県歯科医師会会長   細谷仁憲先生
     東北大学病院総括副病院長 髙橋 哲先生
     仙台歯科医師会会長    小菅 玲先生
 
(4)講演
講演Ⅰ  座長 村上任尚(33回生)
「一本の歯を長期にわたり機能させるために必要な補綴力とは-前処置の重要性を含めて-」
  みさと歯科 久保 圭先生(31回生)

講演Ⅱ  座長 菅崎 紳(34回生)
「歯および歯列を長期的に保全するための補綴力-欠損歯列に潜む病態とその補綴学的対処法-」
  東北大学歯学部口腔システム補綴学分野 依田信裕先生(33回生)

講演Ⅲ  座長 平田政嗣(25回生)
「歯と歯列を守り、咀嚼機能の回復と維持を達成するために必要な補綴力とは-安定した下顎位での咬頭嵌合位確立の重要性-」
  かわかみ歯科医院 川上清志先生(24回生)

(5)昼休憩およびランチョンセミナー
「歯周治療の新たなプロトコールGBT(ガイデットバイオフィルムセラピー)の御案内」
  ㈱松風仙台営業所 歯科衛生士 森 直子 氏

(6)特別講演  座長 虻江 勝(31回生)
「インターディシプリナリーアプローチの中での補綴・咬合治療の役割‐メンテナンスしやすい環境を目指して‐」
  はぎの歯科・矯正歯科 山影俊一先生(11回生)

(7)総括ディスカッション
(8)感謝状贈呈
(9)閉会挨拶、次年度研修会案内

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